泡瀬干潟

○国際湿地シンポジウムをとおして

 ●干潟保全は世界の潮流
 一九九七年、諫早湾干潟の潮受け堤防が閉め切られて以来、日本の湿地保全の取り組みは、失われ行く貴重な自然に反比例するかのように、国際的な湿地保全の流れを追い風にしつつ、少しずつ日本の各地で広がりつつある。昨年の愛知県名古屋市の藤前干潟の埋立計画の撤回、また県内では漫湖がラムサール条約の登録湿地に指定されるなど、渡り性水鳥の保護の観点からも、湿地や干潟の重要性が認識され始めてきた。
 去る十月十四、十五の両日、沖縄市の農民研修センターにおいて、日本湿地ネットワーク主催、国際湿地シンポジウム沖縄実行委員会主幹の「国際湿地シンポジウムin沖縄」が開催された。
 参加者の多くは現地視察のプログラムとして、開催地にある泡瀬干潟を昼、夜訪れ、特に泡瀬干潟に特徴的な海草藻場を始めとする多様な干潟生態系をつぶさにした。現在行政手続きが進行中の沖縄市東部海浜計画の埋立事業によって、泡瀬干潟が危機的状況にあることを改めて認識。

 シンポジウムでは琉球湿地研究グループの藤井晴彦代表が泡瀬干潟の環境アセスメントの問題点について指摘。 一、環境影響評価において、干潟生態系の注目種としてトカゲハゼを取り上げたが不適切である。
 二、泡瀬干潟が沖縄島におけるシギ・チドリ類などの渡り性水鳥の最大の渡来地であるにもかかわらず、鳥の調査が不十分であり、調査地点にも問題がある。
 三、環境庁のレッドリストで「絶滅危惧第1種」に指定されている海藻・クビレミドロについては、環境影響評価書に調査方法が取り扱われておらず、保全策や保全技術も実効性が疑わしい。
●泡瀬干潟アセスの再調査求める
 四、海草移植先種の選定根拠が示されていない。
 五、海草と海藻を一緒くたにしている。
 六、移植実験は成功とは言えない。
 七、底生生物の調査が不十分である。
 八、海草の移植先の環境調査が不備である。
 九、追加調査が評価書に反映されていない。
 ―とアセスメントの多くの不備について詳しく説明した。藤井代表は「今出ているアセスメントは欠陥だらけでこのままではダメだと思う。このように泡瀬干潟の環境を適正に評価する科学的知見に欠けたデータに基づいているため、再調査すべきだと考えている」と訴えた。

●泡瀬は世界有数の干潟
 米国海洋気象局沿岸漁業・生息地研究センターのマーク・フォンセカ博士は、「泡瀬干潟は世界で最も素晴らしい海草の生息地の一つだ。八種類の海草があり、面積あたりの種類数ではフィリピンに次ぐ、世界第二位の海草藻場生態系である」と絶賛。
 埋立計画に伴って行われる環境影響緩和措置である海草場の移植に先立って行われている移植実験についてフォンセカ博士は、■藻場移植は、長期的に見れば失敗する確立が非常に高い。現在の自然な生態系を守ることが必要である■移植実験が成功したと言うことと、移植が成功するということは別問題。影響を受ける場所を破壊して別の所に植栽しなければならないとき、海草の成長と持続に必要な生物学的、物理学的用件が適当な場所を他の場所に見つけることは困難であることが多い■海草はパッチ状に生えているが、パッチ(海草の密の部分)は移動することが多いので、疎の部分に移植すると失敗する。泡瀬干潟埋立に関する海草の移植実験では、疎の部分に移植を行っているが、誤った移植方法は改めたほうが良い。
 ―と指摘。

●法の精神に則り再評価を
 また、環境影響評価研究の第一人者である東京工業大学の原科晴彦教授は、「昨年六月の環境影響評価法の施行に伴い、現在、環境影響評価の手続きの変わり目を迎えている。中城港湾泡瀬地区公有水面埋立事業に関する環境影響評価については、方法書にかかわる手続き、準備書にかかわる手続きを従来の閣議アセスのレベルで行い、評価書の体裁のみ昨年六月に施行された環境影響評価法に基づいている。事業者である沖縄開発庁にやる気があれば、環境影響評価法に基づいて事業自体の妥当性も含めた影響評価を行えるので、是非再評価を行ってほしい」とより住民に開かれた環境影響評価の再実施の必要性を強調した。

●対立構造から相互理解へ
 シンポジウムには中城港湾泡瀬地区公有水面埋立事業の事業推進者側の仲宗根正和沖縄市市長が歓迎あいさつ。事業主体の沖縄総合事務局からは担当部局の長田課長も参加。これまでの自然保護運動における行政と住民の「闘い(対立構造)」から、日本湿地ネットワークの辻淳夫代表らが目指す、行政と住民との「相互理解」「話し合いに基づいた合意形成と取り組みの実施」への可能性を示すシンポジウムだった。 「公共事業」という名の自然破壊が横行し、公共事業の見直しや真の意味での公共事業の公共性が叫ばれる中、同シンポジウムは湿地の保全とそれぞれの地域における湿地の賢明な利用のあり方を追求し、自然資源を生かすことによる地域づくりの在り方を示唆するものだったと言える。
 シリーズ「泡瀬干潟の埋立てを問う!」(1)は、シンポジウム報告の中から、いま沖縄で進行している大規模な開発計画に伴う干潟の危機について、藤井氏の「泡瀬干潟アセスを疑問に思うこれだけの理由」、長田英己氏の「沖縄における海草場の現状」を中心にリポートする。  (砂川かおり)(「いゆまち」第31号から)


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